一言 市街地を出て大波街道はしれば日本板ガラス工場がある、その先の山すそに「野山」という小さな山がありました。

岩ノ鼻いわのはな   大波下おおばしも

  むかし、むかし村人は野山という所で、まきを集め深い所では二キロほどある谷間を歩き、まきをせおってわが家をかえりました。そのとちゅに岩鼻いわはなという所があって、そこには、こしをおろすのにちょうどよい岩が二つほどありました。村人はここまでくると荷物をおろして汗をふき、一休みするのです、ちょうどその上の方に大きな岩鼻がそびえていました。

ある日、おばあさんがたくさんのまきを集めての帰り道の事でした、急にむねが苦しくなり、やっとの思いでここまでたどりつきました。体を横にして一休みをしました。すると、目の上の岩鼻の上にどこからともなく、美しい姿をした羽衣姫はごろもひめが現われ、おどり始めたのです。おばあさんは、その美しさにうっとりとしている内に、苦しみはしだいになくなり、ふときがつくと羽衣姫のすがたはどこをさがしてもいませんでした。おばあさんは無事にわが家に帰りつくことができたのだって。