おんしらずの男      小橋   10

これはいつ頃の話かわからないけど、今年のように大雪の年だつた。

ある日、町までかいものにでかけの帰り道、三浜の峠は大雪でどこが道かわからなく男はすっかり困っていましたた。雪はようしゃなくふりつづき、1メートル先もみえません。男はしかたなく、ざくざくと雪をふみしめながら歩いていきました。すると先の方に人にしては大きなかげが前にあらわれました。「クマだ」はっとすると共に男は自分は食われてしまうかも知れぬとおもった。すると、熊は立ちあがると前足で「こっちへこい、こっちへこい」とするようなしぐさをくりかえしました。

 男は、しかたなくついていった、クマはゆっくり歩いて大木のそばに立ちどまりました。男のほうをむいて首を上下にふり、すがたが見えなくなりました。男は、おそるおそる、大木のそばまでいくと、大きな穴がありクマがいました。しかたがない死んでもともとだとおもい、穴のなかに入っていきました。クマはごろりとよこになり、前足を男の方に出しました。男はけがでもしているのかと思い顔を近づけました。クマは前足を上げて、舌をべろべろとするまねをしました。 男は思わずクマの足のひらをねぶってみました。すると、あまいあまい、まるでハチミツをねぶっているようでした。そしておなかがへると、またねぶった、三日目になって雪は小やみになりました。

 村では、大雪で男は峠の上で行きだおれになって、雪にうずもれ死んでいるだろうと思っていました。四日目に男は元気に峠をおりてきたので、村人はビックリしてしまいました。男は、村の人たちにクマの穴にクマといっしよに入って大雪をさけたことやクマの手のひらをなめてくらしたことを話しました。村人の中に 猟師りょうしがいました。猟師はクマのいる穴を教えてくれといいました。「クマにお礼をしたらどうだろう」と、男をだました。男もそれはそうだと、 猟師をつれてクマの穴の方へいっしょに歩いているとクマがやって来て、立ちあがり前足を左右に大きくふりました。まってくれと、いうのだろうが、猟師は 鉄砲てっぽうをかまえました。するとクマはだんだん近よった、猟師が鉄砲をうとうとしたら、クマは助けてやった男のそばにいくと、手をひらいて男の足を、ばりばりとひきさきました。

 さっと雪の上に血がとびちり、猟師は鉄砲をうつことができませんでした。ただ、うしろも見ないで鉄砲をなげて、いそいで村へにげ帰ったのです。村の人たちはクマに助けられた男がおんしらずで、クマをうとうとした、猟師を 案内あんないしたから、こんなことになったのだと、それからは、なんぼあいてが動物だからといっても、おんしらずのことをするといけないと言いずたわっている。今でも、大雪でさくもつが少なく、木の実のないときにクマは人里まであらわれることがあります。

一言 舞鶴では記録的な大雪75a山間部1メートル以上(平成12年2000年)

BC8000年 三浜アンジャ島・石斧出土
AD  200年 古墳時代横穴式古墳
 天然記念物 オオミズナギシドリの繁殖地 冠島