船ゆうれい   三浜みはま12

 夜の海はなぜかさびしいね。波が「ポチャン、パチャン」と岩や浜辺にうちよせる。大きな波も「ドブン、ドブン」うちよせてくる。小さな明かりをつけた船が通る、あの船はどこへいくのかな、広い海でも船は通る道があるんやそうな、その道からはずれると海に沈んでいる岩にひっかかったりしてあぶないことになるんやて、漁師りょうしさんたちはみんな通る道を知っている。

 むかし、むかしのことだった、三浜のある漁師が海へりょうにでていつたんや、海はとっても静かやった。魚の大群たいぐんが、泳いでいくのが見えたんや、漁師はそのれを、おいかけた、おいかけても、おいかけてもにげていく、お日さまが西の海にしずんでいく、海が金色に赤色にかわる、魚が銀色に光る、漁師はあきらめて、舟のろをこぐのをやめて見つめとったんや。そうすると、いままでにげていた、魚が舟によってきたんや。思わず大きなアミを、魚をめがけて「ザブン」といれたんや、そうして「ザアー」とあげると、小魚が「ピンピン」と、はねてアミ、一ぱい取れた、おもしろいように魚がとれるんや、でも、日はとっぷりくれてきたので、漁師は早く帰ろと思うてろをこぎだしたんや。

 大きな波が舟に「バシャン、バシャン」とあたるんや。そうすると舟が右に左にゆれるんや、なまあたかい風がはだをなぜる、漁師は「ブルブル」と体がふるえたんや、何か出てきそうな気がする、南の浜辺に村の家のあかりが見えるさかい、早ようこの魚を持ってかえりたい、いけすの魚がとびあがった。なにかけはいをかんじた、漁師はふと裏の方をふりかえったんや、そしたら、うすぐらくなった海の上に、いままで、見みたこともないような大きな船がこちらに来よるんや、たしか、あそこに大きな岩がしずんでいるはずや、船はとまったと思ったら、ぐるりと、まわってこちらにやってくるんやって、あんな船にぶちあてられたら、ひっくりかえってしまう。でも船は横までやってきて、やせほそった背の高い人が、「水じやくをかしてんかー、水じやくをかしてんかー」というんや、その顔、すがた、あおい、もしかすると、これが話にきく、船ゆ・う・れ・い・・。

 その船に水じゃくをかしたら、その水じやくで、こっちの舟に水いっぱい入れるとちがうんかと思ってな、水じゃくの底をそっとぬいてわたしたんや。あっちの人は水じゃくで海水をくんでは、こっちの舟に水をいれる。底がないので、なんばい入れてもこっちの舟には一つも水が入らんのや、どうしても船がしずまんので、大きな船はあきらめて、「スーッ」と消えてしもうたんや、波が「バチャン、バチャン」と船べりをたたくおとで、漁師はわれにかえって、あれが船ゆうれいと、いうのやろ。漁師はあわてて、舟をこぎはまべについたんや、そしら、あぶら汗が次から次に出てくるんやって、そして真黒な海をみつめて大きくいきをしたんだって。 ぶじでよかったね。

BC8000年 三浜アンジャ島・石斧出土
AD 200年 古墳時代横穴式古墳
天然記念物 オオミズナギシドリの繁殖地 冠島
天然記念物 三浜海蔵寺のシイ林