町長室つれづれ

1998/2  No.4

自転車をこいで

久美浜町長 吉岡光義


 私たちは、たった一度の人生を生きています。そんな中で、元気に新しい年を迎えることができたことに感謝し、喜びたいと思いつつ、あっという間に松の内は過ぎてしまった。
      *
 今年は、エルニーニョ現象とかで、新年早々から異常気象が続いている。そのせいか、正月は暖かな、まずまずの天候であった。
 久しぶりに自転車を引っ張りだしてきて、カメラを荷台に乗せて、西回りで湾一周に向かった。大浜の浸食の様子や、カキ棚の風景や、甲山の水面に映る山姿などをカメラにおさめた。町で、コーヒーを頂いて一服し、後半周、帰路に向かった。
 動物固有の時間を心臓一拍で測ると、それぞれの大きさに応じたテンポがあり、時間の進む速さは、体重あたりのエネルギー消費量に比例するという。
 この法則に当てはめると、私たちの周りを流れる本来の時間は、ゾウの二倍の速さであり、ネズミの十倍の遅さにあたるという。
 しかし、現実は、生物学的に必要なエネルギーの数十倍の量を使って生きている。技術力で加速される「社会的時間」と、ヒト固有の「生物時間」との落差は開くばかりだ。ここに、現代社会の閉塞状況や心の不安定さや、地球環境問題の根が潜んでいるのではないかと指摘されている。私たちも、せめてヨーロッパ諸国なみの、時間の流れにしなければならないのではないかと思っている。
 自転車を止めて、人と話し、水鳥を見る。自転車をこいで、風を切り、いい汗をかいた。自転車で湾一周できる道と、そこに、桜並木を整備して桜回廊ができればな、と思いつつ。


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