「おのれ、人間の分際で」
怒りに震える聖林理君。
南海紅龍王の夫になるということは、天界でもトップクラスの美しき女神を妻に出来るというわけではなく、次期神族の長の候補者になるということでもある。
莫大な権限を持つ双天覇王。
それは聖林理君だけでなく男なら一度は夢見る地位であった。
「それをたかが人間に」
聖林理君の怒りは頂点に達していた。
ETERNAL GENESIS 海賊版
「神様のつくりかたC」
「ねえシンジ」
夕暮れの街角。
「何?」
さすがにデートの時くらいは、と美少女バージョンのアスカ。
「夕日、綺麗だね」
ビルの間から夕日が街を赤色に染めていた。
「そう?」
「きっと、シンジと一緒にいるからかな」
そっと腕にしがみついてくるアスカ。
いつになくしおらしい態度に改めてドキッとするシンジ。
「こんな顔もするんだ」
新たに発見したアスカの一面。
アスカがシンジの前に現れてから一週間。
シンジは本当に楽しい時間を過ごした。
「私、シンジに逢えて良かった」
「僕もだよ」
生きていても辛いだけの日々だった。
でも、彼女に出会えて少しずつ変わりだした。
「ずっと、一緒にいたい」
「一緒だよ」
腕に力がこもる。
ずっと続くと思っていた幸せな時間。
それを二人は噛み締めていた。
「のど、乾いたね」
シンジはズボンのポケットからがま口を取り出す。
「良いよ」
アスカがパチンと指を鳴らす。
「お呼びでしょうか、アスカ様!!」
どこからか現れたのはトウジ。
「飲み物、買ってきて」
「わしに任せて下さい!!」
凄まじい速度で自販機にダッシュする。
あの一件以来アスカのパシリと化したトウジ。
そんなトウジをシンジは苦笑と共に見つめていた。
そしてそれを苦い顔で見ていた男がいた。
「何やあれ」
自分そっくりの人間がアスカの命令一つで動いていた。
「何か面白く無いなあ」
それを平然と見ているシンジに対してもだ。
「あれが南海紅龍王を奪った人間」
憎んでも憎みきれなかった。
「すまんなあ、ワシはお前を殺す、殺さんと気が済まんのや」
殺意がみなぎる。
しかしそのまま攻撃しても確実に防がれていただろう。
だが彼にとって嬉しい事態が発生した。
「碇シンジ!!」
そういって現れたのは土天聖君。
「覚悟!!」
出現する法具・土蜘蛛。
「しつこいわよ、あんたは!!」
アスカの法具・朱雀が土天聖君を一撃で吹き飛ばす。
そこに油断が生じた。
「行け!!法具・牛鬼」
巨大な化け物が公園に出現した。
「牛鬼!?」
だが朱雀が手元を離れていたため反応が遅れる。
そして、
「うわあああああああああああああああああああああ!!!!」
牛鬼の前足がシンジを捉えた。
そのままはじき飛ばされ壁に叩きつけられるシンジ。
「シンジ!!」
そのままずるっと地面に落ちて動かなくなる。
「やった!!ざまあみさらせ碇シンジ」
嫉妬に狂った上の凶行。
シンジは頭から大量の血を流していた。
傍目から見ても致命傷。
「聖林理君!!」
怒髪天をつく。
アスカの殺気が膨れ上がる。
「良くもシンジを!!」
その目は憎しみと怒りしか宿っていなかった。
「殺す!!」
そのあまりの神力の前に死を覚悟する聖林理君。
「待ちなさい」
辛うじてアスカを止めたのは一人の女性だった。
「ユイ様」
神族の中でも最高位にある女神・九界聖母。
「今あなたが成すべき事は、そのようなことではないでしょ」
その一言でハッとなるアスカ。
「シンジ!!」
だがシンジは明らかに息をしていなかった。
「シンジぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「シンジ、シンジぃぃ」
ただシンジの亡骸にすがって涙するアスカ。
「落ち着きなさい、南海紅龍王」
「でも、ユイ様」
深蒼の瞳からはボロボロと涙をこぼしていた。
「泣いたって彼の魂は戻ってきません」
「けど」
九界聖母はそっとアスカの肩を抱く。
「一つだけ助け出す方法があります」
「え?」
「魂の座に赴くのです」
死んだ人間の魂が浄化される場所。
「しかしそれは!!」
いつの間にか復活した土天聖君が口を挟む。
「ええ、死者の谷を抜けろということです」
魑魅魍魎が蠢く死者の谷。下手すると神族でも彼らに永遠の闇に引きずり込まれる可能性がある。
「行きます、私行きます!!」
シンジを助けるためなら何の迷いもなかった。
「そうですか」
優しく微笑むユイ。
「聖林理君」
「はい!!」
直立不動の聖林理君。
「例え双天覇王にそそのかされたからと言って、直接の原因はあなたにあります」
憎しみを増幅させる術を用いられたのだという。
でもなければ例え思い人を奪われたとは言え、人を殺すことはしない。
「双天覇王のお仕置きは後にするとして、あなたも一緒に行きなさい」
「そんな、シンジを殺したやつと一緒に!?」
「アスカ、彼を許してあげなさい。誰にでも間違いはあります」
「しかし」
「アスカ」
母とも言える女神にそこまで言われ、アスカは渋々承知した。
「俺も行きます」
ケンスケも名乗り出る。
彼にも行く理由がある。
例え双天覇王の仕業だとはいえ。
「残りの龍王にも協力を扇ぎなさい」
「え?」
「あなた一人では厳しい道も、仲間がいれば達成できます」
「はい!!」
だがアスカは気がつかなかった。
何故彼女がシンジにそこまでこだわるか。
そして天界に戻ることになったアスカたち。
彼女の冒険はこうして幕を開けた。
ちょっとシリアスになったけど、つづく(予定)