雄二:　　田植えが終わり、田んぼは日に日に緑が鮮やかに なってきたよ。今はほっとしているんだ。
　　　　　でも、君は元気のない顔をしているね。どうしたの？

武司：　　先週、僕の会社の同僚が突然亡くなったんだよ。彼と僕は仲良しで、よく海に釣り行ったん
　　　　　だ。

雄二：　　どこか悪かったの？

武司：　　いや、健康そのもので、これまで一度も医者に見てもらったことはなかったんだ。

雄二：　　それじゃ、事故か何かで亡くなったの？

武司：　　そうじゃないんだ。働き過ぎなんだよ。毎日、夜遅くまで仕事をして、家に帰るのは 深夜だっ
　　　　　たんだ。

雄二：　　世の中は不景気なのに君の会社は景気がいいんだね。

武司：　　違うんだ。景気が悪いので、３ヶ月前に従業員の半分がクビになったんだよ。そのときから、
　　　　　倍の仕事をしなければならなくなったんだよ。

雄二：　　友達は働きすぎて健康を害し、そして亡くなったんだね。いわゆる「過労死」って いうやつだ
　　　　　ね。お気の毒に。君も体に気をつけてくれよ。

武司：　　ありがとう。君は元気そうだね。ところで、農業をやりすぎて亡くなった人のことは聞いた こと
　　　　　がないね。君はあるかい。

雄二：　　僕もないよ。たとえ、力一杯農作業をしても、僕は精神的には全然疲れないよ。 体の節々は
　　　　　痛くて、腰を曲げるのも難儀するけど、気分は爽快だよ。土を相手にすると精神的に落ち着
　　　　　くんだ。だから、農業の分野では「過労死」はないと思うよ。