数学科学習指導案 以下に、学習形態をティーム・ティーチングにする学習指導案を掲載した。教師間の役割分担を配慮することによって、生徒の意欲を高めさせ、自力解決への手がかりができるように配慮しようとした。


数学科学習指導案

指導者 吉岡久幸(T1),藤川克彦(T2)

1.日時 平成9年10月

2.場所 コンピュータ教室

3.学級 3年1組、2組

4.単元 関数

5.目標
いろいろな事象を関数的にとらえ、その特徴を調べる能力を伸ばし、問題解決に利用することができるようにする。
そのために、
ア.関数y=ax について、グラフの特徴や変化の割合について明らかにする。
イ.身の回りの生活の中から、いろいろな関数を取り上げ、関数の意味について理解を深める。

6.主旨
・教材観
これまでに、比例・反比例、1次関数など、身の回りの事象の中で、比較的ありふれた関数関係について考察してきた。そして、関数関係を式やグラフなどに表すことを学び、変化の割合などにも目を向けてきた。第3学年では、2乗に比例する関数を中心に、いろいろな事象における関数関係について学習することで、関数についての学習内容を一層豊かにするとともに理解を深める。

・生徒観
TT指導で個別に支援することで、生徒の学習の状態をしっかりと把握することができる。そして、式の計算においては着実に基礎的な学力が定着してきた。しかし、関数単元では、事象を関数的にとらえることは苦手にしており、学習意欲も低下しやすい。また、正確にグラフを書くことができず、関数関係を式に表し一般化できない生徒も少なくない。

・指導観
関数は生活に密着することが多いので、身近な具体的な事象を用いて、関数への関心を深め、興味を持たせたい。また、生徒の幅広い見方や考え方を生み出すために、TT授業で、2人の教師が課題に合わせて役割を交代しながら授業を進めたい。そのことで、1人の教師では得られない幅広い反応を得て、学習に対する意欲を高めさせたい。

7.計画(13時間)
第1次/ 関数y=ax・・・・・・・・・・2時間
第2次 /関数y=ax のグラフ・・・・・・4時間
第3次 /関数y=ax の値の変化・・・・・3時間
第4次 /いろいろな関数 ・・・・・・・・・・2時間
第5次 /問題 ・・・・・・・・・・・・・・・2時間

8.本時の学習 (本時 第4次2/2 )
・目標
身の回りの事象の中から誤差を含むデータのグラフ化をして関数の式を求める。そして、関数についての見方を広げる。

・準備物
自作ソフト(最小二乗法でy=axの式を求める)、カーテンレール、メトロノーム、自由落下記録タイマー、OHP、パソコン、針金

9.指導過程
学 習 活 動 指導上の留意点(教師の支援)

本時の課題を知る。
線香を燃やした時の時間と線香の長さ
の関係を提示し、誤差のあるデータの
処理の仕方を知る。
・誤差のあるデータのグラフの記入の
仕方をT1が説明する。具体的に、線
香を燃やしたときのグラフの書き方を
T2が 、OHPで示す。


@各班でそれぞれ実験をしてデータを
とる。
・各班で、実験内容を確認させ、仕事
を担する。
・カーテンレールの斜面落下は、xの
値はメトロノームのカウント数、yの
値を玉移動距離とする。自由落下の実
験のxは、1/60秒を単位とする時間と
する。
・xとyとの関係を表にしっかり記入
する。

Aデータをグラフ化して、関数の近似
式求める。
・グラフを書くときには太めの針金を
利してかく。
・明らかに大きな誤差を含むと思われ
るデータは外して、比例定数aの値を
計算する

B実験した内容と求めた式を発表する。
そして、コンピュータを用い、理想とす
ると式と実験で求めた式と比較をする。

・T1 とT2の2人で実験の仕方を指示
した後、各班で実験を取り組ませる。

・T1 は1班から3班まで、T2は4班
から6班の実験の観察・指導をする。



・カーテンレールを用いる実験は、非常
に大きな誤差をもつので、何度か練習
した後にデータをとらせる。
(カーテンレールの傾きについては、生
徒にまかせる。)
・T2 より、2つの実験は、x に比例
するグラフになること知らせる。
・グラフは誤差を含んでいるため、自在
定規のかわりに針金を使わせ、なめら
かな曲線になるよう注意させる。

・発表はOHPを用いて発表させる。T
2は、コンピュータを使ってデータの解
析をし、T1が結果をまとめる。



身近な事象で、いろいろな関数の関係
をまとめる。
・T1より、板書した比例定数aの値の
解析をさせる。

<授業を終えて(授業者T1)>
・実験の指示が、不的確で実験に参加できなかった生徒が見られた。2人の指導者の打ち合わせを密に取る必要があった。
・理科で習った学習を深めることができた。
・コンピュータを使ってデータを解析することは、手際よくできた。
・自由落下の比例定数が、実験値でa=4.83になったのは予想以上に理想値と近い値になり、指導者自身が驚いた。
・準備の関係で、本時においてはカーテンレールの実験は削除した。
・データの解析の時間をもう少し多く取りたかった。

<生徒アンケート結果>
【質問1】今日の学習内容は理解できたか
@よく分かったAまあまあ分かったBやや難しいC理解できない
13人34人15人2人

【質問2】授業内容に興味が持てたか
@興味が持てたAまあまあ持てたBあまり持てなかったC全く持てなかった
12人39人10人3人

【質問3】楽しく取り組めたか
@楽しかったAまあまあ楽しかったBあまり楽しくなかったC楽しくなかった
19人33人8人4人

【質問4】コンピュータの操作性について
@簡単だったAまあまあ簡単Bやや難しいC難しかった
16人46人1人1人

<生徒の授業後の感想>
・コンピュータの授業はすごく楽しい。(M.A)
・パソコンを取り入れた授業はいい。僕がパソコンが好きなこともありますが。(K.M)
・実験を手際よくできなかったことが反省点です。(T.Y)
・実験とコンピュータを同時に使った授業で面白かった。(R.T)
・理科の実験を取り入れることで、いつもより関数に興味が持てたような気がする。(H.S)
・理科では落下式を求めることが出来なかったが、今回はコンピュータを駆使して式を求めることで、1つ知識が増えた。(T.S)
・私たちでは難しい計算をパソコンではいとも簡単にしてしまうので、「やっぱりすごいな」と思った。もっといろんな使い方を知りたいです。(M.Y)
・私たちの班の値が理想の値と近くてよかった。そして楽しかった。(S.O)
・数学の時間に理科の勉強ができて良かった。理科の実験と数学が一緒になっていて分かりやすかった。
・コンピュータを使った授業はとても分かりやすいです。グラフもきれいにできていて嬉しかったです。(S.M)
・理科で習った落下運動をグラフに表すと2次関数になって、おもしろいなあと思った。(T.F)
・こういう授業をやったのは初めてなので、楽しかったです。またやりたいです。(A.M)
・コンピュータを使って授業するのは、机に向かって勉強するより何倍も楽しいです。これからもできるだけやってほしいです。(R.O)