アスペクト表現
動作の時間的な部分を表すアスペクト表現は、「〜よる」と「〜とる」で表される。この2つの表現は明確に区別されている。
アクセントはたいてい平板に「低低」あるいは「高高」となる。他の方言に見られる「高低」はない。
1 大まかな概念
<一般的に(「降る」、「書く」、「走る」、「作る」など)>
ある動作が開始した直後・・・「〜よる」(進行)
ある動作の開始後、ある程度時間が経過・・・「〜とる」(進行)
ある動作が完了した後・・・「〜とる」、*「〜た」(完了・結果)
*併用可能
<動作の到達点がはっきりしている動詞の場合(「来る」、「着く」、「出る」、「入る」など)>
ある動作が開始して、到達点に達するまで・・・「〜よる」(進行)
ある動作が到達点に達した瞬間・・・*「〜た」(完了)
ある動作が到達点に達した後・・・「〜とる」(完了・結果)
*瞬間を表現する場合はこれが普通
2 使われ方
<「〜よる」(動作の開始・途中・進行)>
用 例 ニュアンス 雨が降りよる。
(雨が降り始めた。)−開始・進行つい先ほどまで雨が降ってなかったが、今しがた降り始めた。まだ本格的には降ってない。 あの山では雪が降りよる。
(あの山では雪が降り始めている。)−開始・進行つい先ほど(先日)まで雪が降ってなかったが、今しがた降り始めた。まだ本格的には降ってない。 子どもが寝よる。
(子どもが寝息につこうとしている。)−開始・進行つい先ほど子どもが寝床に入り、今眠りにつこうとしている。まだ深い眠りではない。 晩ご飯を作りよる。
(晩ご飯をつくり始めている。)−開始・進行つい先ほどから晩ご飯を作り始めている。
状況によっては、動作に取りかかることが遅いことに対する言い訳となる。窓を開けよる。
(窓を開けているところ。)−進行閉まっていた窓を開けようとしている動作の最中。 バスがここに来よる。
(バスがここに来つつある。)−進行バスがこちらへ向かって来る途中。まだ到着していない。 夜が明けよる。
(夜が明け始めている。)−開始・進行早朝、空が明るくなり始めている。日の出はまだ。
「〜よる」と「〜とる」の境界は、その場にいる人の感覚やそのときの状況などにより異なる。
<「〜とる」(動作の進行・完了・結果)>
用 例 ニュアンス 雨が降っとる。
(@雨が現在降っている。)−進行
(A雨がもう降った。)−完了・結果@現在雨が降っている状態。
A雨の降ってない状況から、雨が降ったことの完了を表現している。
現在雨は降ってないが、路面が濡れているような場合もある。あの山では雪が降っとる。
(@あの山では現在雪が降っている。)−進行
(Aあの山ではもう雪が降った。)−完了・結果@現在雪が降っている状態。
A今シーズン初雪があったなど、すでに雪が降ったことが完了していることを表現している。
現在雪が降ってないが、山に積雪が見られる場合などもある。子どもが寝とる。−進行・完了 子どもが就寝中の状態。 晩ご飯を作っとる。
(@晩ご飯を作っている。)−進行
(A晩ご飯を作り終えている)−完了・結果@現在台所で晩ご飯を作っている最中。
A晩ご飯を作り終え、食べるのを待っている状態。窓を開けとる。
(@窓を開けているところ。)−進行
(A窓を開けている。)−完了・結果@窓辺で窓を開けている動作の最中。
A人によって意図的に窓が開けられ、現在その窓が開いている状態。バスがここに来とる。
(バスがここに来ている。)−完了・結果バスがここに到着している状態。 夜が明けとる。
(夜が明けている。)−完了・結果日の出が完了した後の状態。