名詞の語法(文法)

但馬方言の語法(文法)へ
a.一拍語について
 京阪神を中心に話されている近畿方言においては、名詞の一拍語は長音化され、二拍になるのが一般的である。例えば「手」が「手え」、「目」が「目え」といった具合である。
 中国方言に属する但馬方言においてはそうではなく、一拍語は「手」、「目」などと一拍で発話される。しかし、「背え(背)」、「黄い(黄)」、「箕い(箕)」など、長音化される語彙も若干見られる。
 また、一拍語の名詞が文中において目的語等になる場合、格助詞「を」などが省略され、その代わりにその語が長音化されることは頻繁に起こる。
<例1>一拍語が長音化される場合の用例
先生、てえ洗ってきてもいいですか。(手を洗ってきてもいいですか)
人の話を聞くときは、めえしっかり見いよ。(目をしっかり見なさいよ)
ちょっと離れるで、鍋のええしっかり持っといて。(柄をしっかり持っておいて)
人前でへえこくなんて失礼だぞ。(屁をこくなんて失礼だぞ)

b.「さん」、「ちゃん」を付けて擬人化
 名詞に「〜さん」、「〜ちゃん」を付けて擬人化するものがある。この用法は、丁寧語の一つととらえることもできる。
<例2>「〜さん」、「〜ちゃん」を付けて擬人化の用例
お芋さん(芋) お豆さん(豆) 豆ちゃん(豆) おかゆさん(おかゆ)
飴ちゃん(飴) のんのんさん(仏さん) おくどさん(かまど) うん(こ)ちゃん(大便)
へっついさん(かまど) 蚕さん