遅上りのアクセント
兵庫県豊岡市
谷口 裕
但馬ないでは各語において、東京式アクセントと同様のものが多い。しかし、日常の会話では必ずしもそうとは限らない。起伏式の語は下がり目の来る拍(アクセントの核)以外は、低く平板に発音される場合がある。これをいわゆる「遅上り」という。鳥取県に続くアクセントである。方言色が濃いと感じられる。
<遅上りのアクセント>
東京式アクセント 但馬式アクセント
(遅上り)湖(みずうみ) ○●●○ ○○●○ 段々畑(だんだんばたけ) ○●●●●○○ ○○○○●○○ 頼もしい(たのもしい) ○●●●○ ○○○●○ 紛らわしい(まぎらわしい) ○●●●●○ ○○○○●○ 育てる(そだてる) ○●●○ ○○●○ 慰める(なぐさめる) ○●●●○ ○○○●○
少々極端な例ではあるが、文のレベルになると次のようになることがある。
<文のレベルでのアクセント>
餅まきと福引きがあります。(もちまき’とふくびき’があります。) あの山の段々畑は美しい。(あのやま’のだんだんば’たけはうつくし’い。) あの人と酒飲むと楽しい。(あのひと’とさけの’むとたのし’い。) 朝ご飯のとき、ホットケーキ食べた。(あさご’はんのとき’、ほっとけ’ーきた’べた。)
*太字と"’"は高く発音する拍
中年層から高年層にかけて、このアクセントの頻出する割合が高い。また、但馬でも北部で多く観察される。
しかし、このアクセントはかなりの変化を遂げた結果できあがったものであり、歴史的に見れば新しいものと考えられる。つまり、語の弁別条件として「語の中に下がり目があるかどうか、ある場合はどの拍にあるのか」ということが重要視され、その最低条件をそろえた結果できあがったアクセントであろう。