今、なぜアマチュア無線なのか

 インターネット、電話等の発達により、最近では情報収集やコミュニケーションの手段が、電話回線を使用するのが当たり前のようになってきている。回線を使用するため、1日中、また1年中同じ条件で情報収集やコミュニーケーションを取ることができる。非常に便利な世の中である。私自身もそれらを頻繁に利用しているため、そのありがたみはよくわかる。
 一方、電話回線を使用せず、公共の電波を利用する無線は、季節や日々の天候、電離層の状況、また太陽の黒点の活動などにより状況が非常に不安定である。きのう、まるですぐ目の前でいっしょに話をしていたような北海道の仲間が、今日も同じようにいっしょに話をすることが出きるかどうかはわからない。また、場合によっては何年間も出会うことがなく、数年後の偶然の再会によろこびあうことも少なくない。
 私自身は、長時間無線機と向き合うことはあまりりなく、せいぜい長くて2、3時間である。しかし、その2、3時間の変化がおもしろくてたまらない。短波帯に属する21メガヘルツの15メーターバンドで、春から夏にかけての夕方から夜、交信を続けているとそのことがよく実感される。スポラディックE層(いわゆるEスポ)の出現により、こういった比較的高い周波数帯の電波でも比較的近距離(数十q)まで開けてくることがある。しかしずっと同じ状況で開けているわけはない。「分」、あるいは「秒」単位で変化していく。九州の人達と交信し、そしてそのすぐ後には山口県、広島県の人達から呼ばれ、そしてその後地元の同じく近畿圏内の仲間からの声かけ。そして今度は関東方面の人達から呼ばれる、というぐあいである。
 話の内容はたいていの場合、大したことではない。名前とレポートの交換、天気と簡単な状況を話し、ビューロー(日本アマチュア無線連盟)経由でQSLカードの交換を約束をする程度である。それでも、相手の声の調子などから相手のキャラクターなどが推測される。人間的な温かみを感じ取ることができる。
 また、日本国内にとどまらず、海外の人達とも手軽に声を交わし、QSLカードを交換することもできる。かなり強い訛りのある、英語を母国語としない人達の英語は大変味があり、そんなところにも面白みがある。「英語は世界共通語」ということが実感できる。外国のアマチュア無線化の中には、日本語の達者な方もかなりたくさん見られる。そういった方々と日本語でお話しをすることもある。たいていの方は日本に滞在あるいは留学の経験はない。現地の学校で特別に日本語を勉強した人達も少ない。独学とアマチュア無線をたよりに日々こつこつと勉強されている方が多く、私自身頭の下がる思いをする。
 このように、アマチュア無線と一言にいっても、その楽しさにはかなり奥深いものがある。

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