2004ー1

初日から試練が、、、、。

小さな町に着いて途方に暮れた。困ったときのタウンページ、この町にバイク修理屋は2件あるようだ、どうしよう?時間はまだ昼飯時。
まずは飯食ってからにしよう。良い考えが浮かぶかも。
着ている合羽、防寒着を脱いで身軽になり、近くの大衆食堂で醤油ラーメンを頼む。テレビが大晦日の市場からの中継をしている。
斜め向かいの客で来ているおばちゃんが、こちらに対して興味津々、やたら目線をぶつけてくる。今僕は遭難者、やっぱり弱っているオーラを発しているのか?!
「アルバイトかい?」「えっ?」「配達かい?」どうもなにかの配達員だと思っているよう。「いやー一応旅行なのですけれど、、、」「大学生?」「いやー一応働いています」久々に大学生に間違えられた。これで最後か。
「バイクでたいへんしょー?」「そうなのです今調子を悪くして困っているのです」と言ってバイク屋さんが近くにあるか聞いてみたらすぐそこにあるようで、ラーメンを食って早速そこにジャイロ押して行ってみた。もしかしたら原因が分かるかもしれない。
そのバイク屋さんは、あるにはあったが、この季節開いてるのだかどうだか、自転車、除雪機、船外機も扱ってるなんでも屋さん。
店に入り人を呼んでもなかなか出てこない。
やっと出てきたおばさんが、「何?」「バイクが調子悪くてちょっと見てもらえませんか?」「、、、、、」 いやな感じ。こんな季節にトラブル抱えてくるライダーは招かざる客か? 中でおばさんが主人らしき人と僕を受け入れるかどうか相談している感じ。
出てきた主人らしき人に今の状況を説明する。
原因を探るのに回り道にならないように、今までの部品交換やキャブばらしたこと説明を聞きながら、主人は黙ってバイクを眺めていた。
「寒さで調子が悪いのか、とにかく原因が知りたいのです」 こちらとしは、その道の「プロ」に頼んだ以上トラブルを原因だけでも探したい。
ただこの人がその期待どおりの人か?素人レベルの人か?
ジャイロを作業場に引き込み、ジャイロをさわりはじめた。
一発でプラグのフタの場所を見つけて開けたので、「もしかしてこの人はいけるかも」こちらとしては、このお店の技術をはかる目安として、真剣に手つきをみた。
次に圧縮など計る、特に問題なし。
お店の人の話では、マフラーから出る排気が少ない気がする。
マフラーの詰まりのようだと、、。
一応今回来る前に、マフラー掃除のつもりで、外してエアーで掃除したし、第一1万キロそこらで、エンジン止まるぐらいのカーボンが溜まるのか?それにこんな急に詰まるものなのだろうか???
店でもエアーをマフラー内に吹いてみていたが、多少抵抗はあるようだけれど空気は出てくる。
お店の人がマフラーの詰まりだろうというので、その修理作業をお願いした。
バナーで一時間ぐらい入念に焼いてもらった、時々ハンマーで叩いて、中から煤がポロポロ出てくるが、そんなにたくさんは出てこない。
途中から地元のおしゃべりの社長風の人がのぞきに来て、仕事納め後の暇つぶしか、根ほり葉ほりこちらに質問を浴びせてくる。
バイクが正月に最北端に集まることは知っているようだった、それにしてもこのバイクは大きなバイクだと、ジャイロが原付だと言うことを知って驚いていた。
「おれがおまえに近道を教えてやろう!」と言って地図を書きだした。
「これで5分は変わるぞ!」と言ってメモをくれたが、なんだか知っている道に思えたが有り難くちょうだいした。
途中で店の人がどこかに出かけたりして、作業完了まで3時間ほどかかった。

エンジン試走する頃には外はもう暗くなりかけていた。 ちょっと乗っていいですかと、すぐに組上がったジャイロをすぐに外に出し、乗ってみた。「ブイーン!!」アクセルに合わせて久々エンジンが吹け上がる!!「なおったーのか?」まだはっきりとは解らない、もしかしてこの暖かい作業場所で寒さの原因が一時的に調子が戻っているだけなのかも、、、。
そんなことが少し頭をよぎったが、実際目の前で調子よく回るエンジン音を聞いたら、一刻もはやくコマを進めたい。
とにかく支払いし、再び国道に出た、「あーよかった」店に見てもらって直してもらうことができた!不安から一気に解放へ、、、、 黒い乗用車が目の前をぎりぎりに通過して、急停止した。
「おれが道案内してやる、この車に付いてこい!」さっきの社長がいても立ってもいられなったよう、社長がジャイロに合わせて先頭走っているために、長い渋滞ができた。なんだか申し訳ない、、、。
郊外にでたところで路肩に止まり、 「ここから先は道なりだ」と教えてくれた。社長にお礼を言い、別れた。
すぐに吉里吉里の宿の予約をしなくては、電話ボックスから本日の晩ご飯と宿泊の予約をし、再びジャイロであと40キロほど先の宿に行こうとすると、なんだかジャイロの調子が変。元の悪い感じに似てきた、そうこう考えていると、上り坂でもないのに最高速度が落ちてきている。「さっきのは幻か!」ぬか喜びとはこの事。
僕の気持ちもスピードメーターの針が下がるのと同じように一気にダウン。

このまま町から離れたらまずい、Uターンしさっきの町まで戻りながら調子を見ることに。どんどん力がなくなってきている、少しの登り勾配でも足で漕がなくてはならない。さっきのバイク屋まで行けるかどうか。 「あーぁー」ヘルメットの中でため息。今回調子が戻ったの半時間ぐらい。やっぱり寒いのが原因なのか、、、。
今回の旅は、○なのか×なのか、、、、、。
「どうするどうする?」とりあえず今はバイクはあきらめよう。 なんとか町にたどり着き、ジャイロは駅の駐輪場に停め。駅前からバスに乗り換え今晩の宿「吉里吉里」に行く予定をたてる。しかし時間金額ともけっこうかかり、往復の値段で一晩分の宿賃が消える。
もうバイクはほとんど前に走らない。宿のキャンセルをし格安ビジネスホテルを見つけて一段落、まだ店が開いている時間帯だったので、レンタカー屋で車の手配が出来るかなど、あちこち回った。
商店街の明るいところで、バイクを止め色々見るのだが、3輪のため、後輪を両方空回しすることができず、なかなかバイクの調子がわからない。
頭の中がごちゃごちゃになり、ビジネスホテルに帰って、 コンビニ弁当を食べながら、気持ちを落ちつかし今後の予定を練り直す。
バイクがダメなら、今後は全て鉄道とバスに。
そうなると、旅費もオーバーだけれど、仕方ない、これからは時刻表片手に、ご当地特急列車でも探す、「鉄っちゃん」になるか。
とりあえず稚内で宿を営む「樹」のオーナーDEEさんと連絡がつき、明日は車を借りれる約束ができた。
しかし、今日は1日とても長かった!
明日、稚内だ。

30日

9時の沿岸バスで留萌を立つ。
ホントはジャイロで走るべきオロロンラインを車窓から見る光景は、晴れているから余計に残酷だ。
雪の花がバスの前を舞っている、乗ってくる客は、地元のおじいさんや、高校生など。
このあたりからの景色は、海沿いの一直線を淡々と進む。この国道を平行して廃線になった羽幌線が同じく 続いているが、町の数も少なく、そこにあった駅舎はひなびたものだったのだろうなあ、今では線路も無くその面影もほとんど無い。
だんだん演歌の気分になってきたので、持ってきたウオークマンで、R&Bを聴きながら、 持ってきていた気付け薬のバーボンを飲む。 目の前の雪景色は、砂漠、乗っているのは、グレイハウンドバス、そうここはアメリカ、、、。ちょっとムリがある。
このバスは細かな停留所も止まる割には、長距離で実際4時間ぐらいかけて、豊富まで行く。
そこからはJR乗り換え、豊富駅から、稚内まで。また小一時間。
今回の宿お世話になる、「宿泊センター樹」のDEEさん所に着いたのは、3時になってしまった。
話しもそこそこに、DEEさんの愛車であるハイエースをお借りし、再び約200キロ離れた留萌へ。
すぐに夜になる。このハイエースは車椅子用リフト付き、 FRで多少リヤが滑るが、それもまたたのし。
吹雪いてきたサロベツ原野をひた走る。風が右左とランダムに襲い、ハンドルをかなりとられる。
吹雪や追い抜かれたトラックで道が見えなくなることがあるけれど、そんな時は路肩のマークがある上を見ながらの運転。3時間で留萌に。
ジャイロを車椅子用のステップに乗せるが、これがまたぴったりのサイズ。
まるでこの為にDEEさんが用意してもらったよう。
簡単に乗せられた。いいですねえー特装車!すぐに来た道を引き返す。
稚内に着いたのは9時頃、国道の雪道の400キロ弱を6時間のペースはかなり疲れた
大事な借り物の車、いい仕事してもらいました。
帰ったらすぐに、DEEさんの経営する「樹」のガレージでジャイロの不調原因
を究明するつもりだったのだけれど、運転で肩がこったので明日にする。
でもこの同じ場所にジャイロが持ってこられた事で一安心。
もしジャイロがダメなら、ここに冬期間置いてもいいよと、DEEさんが言ってくれたので、 最悪ここでジャイロはお休み。
まあ、夏にもう一度ここに来れる理由ができるから、それはそれでいいか。
夕方にここまで無事にたどり着いた、涼さん、つっしーさんとビールで乾杯。
とくにつっしーさんのモトラは、エンジン、タイヤ共に不安な要素があったので、 喜びひとしおの様。

12月31日。

午前中つっしーさんは、木ねじスパイクを調整する横で、僕は再びジャイロの点検。
今日もジャイロは不調のまま。ほとんど走らない。
今日夕方までにジャイロが直らなければ、2004年の宗谷は諦めよう。あとは電車、バスでの移動に。
夏に再トライして、ここからジャイロで宗谷まで行こうと思っていた。
夏に スパイクタイヤのままで、宗谷まで行くってのも、半年がかりかけたツーリングとして面白いか。
それにしても、ここで原因を突き止めておかないと、部品の手配のしようがないな。
と色々考えながら、もう一度キャブを掃除してみる。
「樹」にはコンプレッサーがあるので、何かと便利。
キャブにはやはり問題なく、もしかしてウエイトローラかプーリーあたりが寒さで固執して回転が上がらないかと、疑い始める。
しかしドラムやプーリーを外すのに、工夫したがムリ。
インパクトレンチが欲しいところ。仕方なくもう一度マフラーを外してみてエンジンかけると、結構回転が上がる気配が、、、、。
「んんー!!」もしかして、、、。
原因はやっぱりマフラーのよう!、マフラーをハンマーでたたくが何も出てこない。 エアーで吹いても何も変化はない。
「やっぱムリかー」見回すとそこにサンダーがあった。 「そうだ1切ってしまえ!」排気が悪さをしないよう場所を決め、数センチ根本付近に切り込みを入れる。
「やったー!!」今までの憂鬱が一気にマフラーの抜けと共に、吹き飛んだ!
時間は夕方。昨晩は諦めモードで、明日からの電車に移動に備えるために防寒着など小さくパッキングしたのをもう一度出して、町中にテスト走行に出る。ガソリンも入れないと、明日持たないぞ。
稚内市内一時間ほど走ったが問題はない。間に合ったみたい。
遅い昼飯をとって、再び気持ちをライダーに戻す。
DEEさんが様子を見に宗谷に行くので、僕とつっしーさんヶ車に便乗し、見に行った。
つづく