旅立ち〜東海岸

ただのバイクバカが、初めて飛行機に乗った。
行き先はオーストラリアはシドニー
早朝、この空港に降り立った。
この国で僕を知っている人は誰もいない。
なんの予定も予約もない。
25才にして、オールクリア状態。
こんな事一生のうちでもうないかもしれない。
これから1年間のビザの有効期間に何が出来るだろう。
おもしろいぞ!
すごろくの開始だ!

9月2日
いよいよ地平線に向かい出発!これからがほんとの旅の始まりだ!
2時間ぐらい走ると、シドニー郊外からパシフィックハイウェイにでる。
街がなくなり、道のみ。車がびゅんびゅん流れている。
バイク野郎が大きく手を挙げて挨拶してくれた。
「いくでー!!」

しばらく走ると、町並みはすっかりなくなり、ただ林の中を走るハイウエイのみになり、あたりにはなにもない。
シドニーの面影はなにもない。
ここからはこの積んでいる荷物が全てだ。
9月3日ー
思ったより旅は快適で、キャラバンパークという施設がよく整備してある。
北上するにつれ段々暖かさが増してくる。
夜寝るとき寒いと思ったのは初日のみで、4日にはゴールドコーストに着きなんとか泳ぐこともできる。
シドニーは寒かったのに。
こんなに快適バイク旅ならもっと早くシドニーを出ていれば良かった。
暖かさもあり、ゴールドコーストという観光地でもあり、浮かれ気分で少しの間滞在する。

9月12日
今日から一人になる。
朝起きたらテントの外に置いていた予備の燃料タンクがナイ!
認めたくないけど、盗まれたみたい。以後気をつけよう。
1日だいたい200ー300KMの移動。

9月15日
エミューパークというキャラバンパークで、スイス人とスエーデン人のライダーに合い、意気投合。
スイス人のジョーという男とが何やら話の中で、トゥギャザーと言っていた。
帰ってテントの中で意味を辞典で調べると、(一緒に)とある。たぶん明日から一緒に行動しようといっていたようだ。
夜バーベキューパーティーで盛り上がりすぎ、次の朝は2人とも二日酔いでテントからでられず。
トイレの周りはゲロゲロのゲロバンパーク
出発は明日に延期に決定。
次の日、2人エミューパークを、出発、2人とも同じバイクなので、同じペースで走れる、燃料を入れるタイミングが同じなので、ロスが少なくていい。今日の予定は、ジョーがどこからか手に入れた小さなパンフレット、ジョー曰くここは牛がいていい所にちがいない。
途中から1号線を外れる。車は1時間に2台ぐらいしか会わない。
牛が道にまでている。
奴らは近くまで来ないと全然気がつかない。
そして10メートルぐらいまでちかずくと、牛の体がビクーンとふるえ「なんじゃーおまえはー」という感じで突然気がつき、びっくりする。
そしてドタドタとブッシュに入っていく。
僕は道にでている牛を初めて見たので、いやがおうでもこのオーストラリアの景色に盛り上がってきたぞと、ジョーの顔をチラとみた、ジョーも気持ちは同じらしく、へんてこなゴーグルの中から、真剣な目つきでこちらに大きくうなずいた。
だんだん時間の経つうちに風が熱風にへと変わりはじめ、進むのがつらくなってきた。
昼をとうにまわっているが、風は相変わらず熱い。 水が欲しいと思ってしばらく走ると、ジョーの言う目的地に着いた。
そこは映画のワンシーンに出てるような、なにもないブッシュの中にぽつんと一軒ある、プール付きの古びたロードハウスだった。
すぐ服を脱ぎプールに入り、ビールを2本飲んだ。
あたりは静かで、そのうちすごいきれいな夕焼けになった。
テントを張り、夕焼けに見とれていると、「ドドドドド」とすごい音が上からやってきた。
ヘリコプターがこのスタンドに降りてきた。「なんじゃーこりゃー」 話好きのジョーが、このヘリコプターの男に話しかけわかったことは、こうやって空から牛の管理をしているそうだ。
どれくらいの範囲かと聞いたが、ゼロがたくさんということしか、僕の英語力では解らなかった。

9/17
ブラウンリバーナショナルパークへ行く。
ここで、会社のホリデーで奥さんと四駆のランクルで、アウトドアを楽しんでいるジェフというオージーと仲良くなり、ステーキをごちそうしてもらったりした。
ジェフは簡単な英語で、「おまえは偉い、なぜならたくさんの日本人はオーストラリアに来るけども、東海岸を一週間ぐらいでたくさんのお土産を買って、あっという間に帰ってしまう。
その点おまえは、こうしてキャンプをしながら本当のオーストラリアを求めに一人で来ているのは、オーストラリア人として、うれしい。
まだいっぱいたくさん美しいところがあるから、ゆっくり見ていってくれ!」 といって夕焼けにラブリーと言って投げキッスをした。
ジェフの腕にはカワセミのタトゥーが彫ってあり、それがまた綺麗だった。
ジェフが僕に親切なのかというと、ヨーロッパの銀行で働いているとき日本人のなかいしげるという友達がいたからだそうで、こっちに遊びに来て欲しいのだけど、なかなかこれなくて残念なんだ、と言っていた。
そのナショナルパークをベースにジョーと昼間いろいろなところに行く、小さな川を何度も越えたり、すごい坂を上ったり、たぶんここを日本人で来るのは初めてだろうなあ、と思うローカルなダート。
ジョーは大きな体で、DRを操っているが、僕はダートにはいるとバイクに振り回され気味で、その上次から次ぎへと、ブッシュウオーキングだとか、ここの滝はいいぞ!と山登りをしたり、あらためて西洋人と東洋人の体の違いを感じてしまった。(今から思うとただ僕が軟弱なだけか)
しかしその行く先々には、絵に描いたような美しい湖や滝の下で、昼飯を食ったあとそこで、泳ぐ気持ちよさにジョーと知り合えてよかったっと思う。
そして少しずつ北上するにつれて、気温が上がり体が少しずつばててきていた。

9/14
マッカイでバイクの整備をする。
エンジンのシリンダヘッドのボルトが一本完全にゆるんでいた。
サイドスタンドのボルトがバカになりかけていたので、注文して交換したが、 やっぱりサイズが違っていた。やっぱりオーストラリア。ノープロブレム。
ダートをかなり走り込んだので、スタンドの洗車機を借りて、洗車、オイルなど換えたりして時間はゆっくりと過ぎていく。二人ともバイクがピカピカになった。
僕とジョーには、幾つもの共通の持ち物があった。
まずバイク、同じDR、ジョーのが少し新しいが。同じ防水ソニーの黄色のウオークマン、ジョーはU2を聞いている。同じシュラフこれは珍しくドイツ軍のの払い下げ品で、半防水の、手が出る袖付きのやつ。
もちろん偶然だけど、変に持ち物が一緒で、気味悪いぐらいだ。
キャラバンパークのチビどもが外人の僕を珍しがって、いろいろ聞いてくる。 「正しい日本語を教えよう」と鼻に親指を当て、手を回転させるのがフォーマルなやり方だ!と教える。最初に仲良くなるのはたいてい子供。
ここの浜辺は潮の満ち引きが激しく、500メートルほど海岸線が動く。
ボブマーレーを聞きながら浜を歩いていると、「ゴエッ!」と貝が音を立てて泳いだ。
びっくりした。
夕方丘の上のパブでビールを飲んで、帰り道抜いたり抜かれたりしながら競争して帰るのは同じバイクだから、楽しい。
夜テントの上になにやら猿のような生き物がいるではないか!どうやらポッサムと言う名前の生き物らしい。
夜中ラジオを聴いていたら、日本の歌が流れてきた。どこかで聞き覚えのある歌だと思ったら、高校の九州への修学旅行でバスガイドさんが歌ってくれた民謡だった。
五木の子守歌。

8年間1度も思い出さなかったのに、急にそのときにタイムスリップしたみたいで、月あかりの中、なんだか不思議な夜だった。 ジョーは夕方どこかへ出かけ、深夜になっても戻らなかった。
5時頃突然バイクの音で目が覚めた。
ファックとかシット!とか言っていてうるさい。
あんまりうるさいので無視するわけにも行かず、テントからでてみると、 体中包帯を巻いている、バイクも傷だらけ。なんでも飲んでどっかで転んだらしい。
次の日出発予定だったが、ジョーのアクシデントで1日延ばす。1日ジョーはうるさい。
体が痛いらしい。動く度に「シット!」とかファックとかいう。おまえが悪いんだろうと言うと、「それは言うな!」と言う、そして「これからはもう酒を飲んでバイクは乗らない、もし今度こういう場面でおれが飲もうとしたら、殴っていいから止めてくれ!」と言う。
僕は、やれやれと思った。
そしてバイクに付いた傷を一つ一つ指さし、すごく気にしている。
こういうとこは、やはりスイス人で、細かいなあと思った。
ジョーはうるさいので、その間、僕はサンデーマーケットで、フルーツを買い浜辺でそれを食っていた。
次の日タウンズヒルという町に着く、だんだん道に飽きて、別のことを考えて走っている。
つづく




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