番外 自転車
出番ですよ!、自転車野郎
30日
朝、気温マイナス4度ぐらい。
車内は、1度ぐらい。
天気悪く、スノボの予定中止。
朝から吹雪。
車のライトも昼から点けたまま。
稚内ぶらぶら、車で走る。
温泉にゆっくりつかる。
明日への鋭気を養う。(ほんまかいな)
稚内で2日目の電気毛布。
31日
今日は自転車の日。
8時半起床。
10時半に全ての用意ができた。
いざ大きな荷物を背負っての折り畳み自転車は、
姿勢がかなりきつい事を初めて知る。
こぎだして、200メートルもしないうちに、こりゃとんでもないぞと!
いう気持ちになってきた。
平らな場所でも、荷物を背負っての折り畳みの自転車こぎは、とても力がいる
ということが分かった。
(ここまできてなにをいうとんのじゃ!という気持ちもあるが)
それを、氷や圧雪の道の上をバランスとって走ることは、それとは別の体力がまたいる。
そんなことは、最初から承知のはずで、ここまできた訳で、そうでなくても
お家には立派なマウンテンバイクがあるのに、このぼろ自転車を選んできたわけなのであるが、
500メートルほど進むと、体が暖かくなってきた。
1キロほど進むと、汗が吹き出てきた。
嘘みたいだが、言ってしまおう!
「暑いぞ!」
今晩テントで寝るために、着ているもの総動員して厚着しているからよけいだ。
稚内市内は、正月準備に忙しい車がひっきりなしに走り回り、スーパーは人でごった返している中、
雪道を大きな荷物背負った僕は汗をかいて、静かにこいでいる。
早く、服を脱ぎたかったが、人目も多く、ひたすら市街地の果てを目指す。
とりあえずこれ以上汗をかかないためにも、自転車を押して歩いたため、町中を抜けるだけで、2時間ほどかかってしまった。
昼になって、ようやく上着2枚を脱いだ。
体から、もうもうと湯気が出る。
気温は氷点下4度で、着ているものはたった3枚。
のどが渇き、コーラでも飲みたい。
水筒を出すが中の水が凍ってしまっている。
周りに自動販売機もないし、あっても冬季は稼働していないものがある。
こうなればいっそのこと、シロップ持ってきてここらへんの雪にかけて食えばよかった。
ひたすら自転車を押して歩く。
海沿いの国道に出ると、横風がきつい。
バイクが2台ほど、ピッとホーンを鳴らしていった。
宗谷組だろう。
しかしこっちはいつまでたっても景色が変わらない。
荷物が背中に食い込む。20キロほどあるかも。
自転車を押して歩く時の目線は、足下の先の2メートル前方。
時々、どれくらい歩いたかふと前を見ても、相変わらず同じ景色。
車が横を通りすぎて行くけど、そのスピードに比べれば歩く速度はほとんどゼロに近い。
しかし、止まっているのと歩いているのとでは、この差もまた大きい。
バイクなら、気は乗らなくても、右手のアクセルだけひねっておけば、とりあえず前に進むが、
この自転車は、自分が動かなければ状況はなにも変わらない。
10キロほど進んで、ほとんどを歩いた。残りあと20キロ
天気は海沿いにしては、まだ安定しているほうだけど、時々吹雪かれる。
その時は、ひたすら道ばたでじっと耐えるのみ。
「俺は何をしているんだろう?!」
朝からもやもやしている気持ちは、これだった。
考えてはいけない事。今まで考えたことなかった事が、歩きながら次々浮かぶ。
やっぱり、俺は変わり者?
そういえば、学校通っているときも変なことにこだわった。
6キロほどある学校まで、オール手放運転で行けるか?(自転車) 何度も成功!。
いったい何人自転車に乗ることが出来るか? 5人!
学校内ででうんこしない! 学校周辺で野グソして成功!
などなど、
性格は、すごくいい加減で、優柔不断なのに、こういう事に限っては、がんばってしまう。
なんなんだ! 自分! おーい!
そして今、
「この自転車は楽しくない」
なんか、鍛錬修行みたい。
時々気分転換に、自転車に乗ってみるが、立ちこぎでないと前に進まない。
そのくせ、スピードは歩いているのとあまり変わらない。
路面はフラットなアイスバーンで、タイヤもべつに空回りするわけではないのに、
やはり、極小のタイヤサイズだから、弾みがつかないのかなあ。
振り分けバッグが、ペダルと足に当たり大変こぎにくい。
幸いなのは、体を動かしているので寒くはないと言うこと。
ただこれは、スピードが出たらいいというものではないし、
わざわざこの自転車で行くことに意味がある訳で、いや意味がないんだったかな?意味があるんだったかなあ?意味がないことに意味があるんだったかなあ?
もう訳分からなくなってきた。
これは、感動を体で表現しているパフォーマンスだから、芸術活動とも言えるのかなんて。
こんな事が頭の中を駆けめぐる。
後ろから、バイクの音がした。
まっちゃんと、竹ちゃんだ。
アイスバーンの上をスピンして止まった。
無事にここまで上がってきたのだ。
リア駆動のみのデフ無し4輪バイクは、滑って楽しそう。
岬での再開を約束し別れる。
午後3時をまわり、辺りはすこし暗くなってきた。
北海道の夜は早い。
集落にあるコンビニにようやくたどり着いた。
桃の天然水と、チョコレートと酒を買う。
酒は宴会用。
初めての一服。
休みなしで、5時間近く歩いてきた。
この集落を越えたら海沿いの道にまた出て、そしてカーブを何回か越えたら岬だったと思う。
しかし時間にしたら、いまから2時間はかかるだろうなあ。
しばらく歩いていると、無性に腹が減ってきて、さっき買ったチョコを食う。
何分間かおきに、食べたくなって道ばたでそのたびに立って食べてたら、ランクルのお兄さんが、
止まって「自転車も一緒に乗せていこうか?」と聞いてくる。
これも、宗谷組みたい。
大変ありがたいお言葉だけど、ここまできてそれもないだろう。
でも、わざわざUターンしてくれて、せっかくのチャンス!
荷物を運んでもらうだけなら、セーフだろう?!
と自分自身の審議にかける。
「じゃあ、背中の荷物だけ乗せてってください」
荷物がなくなると、こんだけ楽だったのか!というぐらい、気持ちも急上昇。
鼻歌なんかが出てくる。
体が軽いので、なんとかこげる。
辺りは真っ暗、夜になってきた。
ここからは自転車に乗ったり、歩いたりと、半々。
宗谷町?についたがそこからまだ岬まではあと数キロプラスだということが分かる。
進むしかない。
ここらあたりから雪もやみ、視界良好。
もう最後と思ってから2つめのカーブを越えたら、岬のオレンジ色の明かりが見えてきた。
この時ばかりは漆黒の海に浮かぶ大きな船のあかりのように見えた。
(、、、、、と書いておこう)
ホントはただの駐車場の照明だけで、なにがあるわけでもないが、、、。
岬に6時前に到着。
距離をトータルすると、出発点から岬までは35キロ前後あっただろうか。
最初は3時間ほどで行けるかなあ、と考えていたけど、7時間もかかってしまった。
これが3年前のハーレーならド・ド・ド・ドーンと爆音で到着なんだけど、
今回はサカサカっと静かに到着。
今年のこだわり自己満足チャレンジは、こうして終わった。
つづく!
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